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医療搬送用ヘリ事故から1カ月 機体制御部品の破断が判明 離島では「何秒でも早く病院に」「一刻を争うからヘリ利用」 【福岡】

事件・事故

7時間前

長崎から福岡に向かっていた医療搬送用のヘリコプターが壱岐沖で転覆した状態で見つかり3人が死亡した事故から、5月6日で1カ月です。

国が発表した墜落したヘリの新事実。

そして、今後の離島医療のあり方を取材しました。

◆記者リポート(4月7日)
「海の上に黄色いフロートが確認できまして、その下には白い機体のヘリコプターが確認できます」

事故が起きたのは4月6日。

長崎県の対馬から福岡市東区の「福岡和白病院」に向かっていたヘリが突如、消息を断ち、転覆した状態で発見されました。

搭乗していた6人のうち、女性患者(86)と付き添いの息子(68)、男性医師(34)の3人が死亡しました。
なぜ事故は起きたのでしょうか。

事故原因を調査している国の運輸安全委員会は5月2日、これまでの調査結果を発表しました。

それによりますと、異常が確認されたのは、ヘリの後方で小さなプロペラがある「テール・ローター」の部分。

その内部にあり、機体を制御するための重要な部品「コントロール・ロッド」が破断していたことが分かったのです。

なぜ破断したのか、国が調査を進めているほか、唐津海上保安部はヘリの運航会社「エス・ジー・シー佐賀航空」を業務上過失致死傷の疑いで捜査しています。
離島から患者を運ぶ際に起きた痛ましい事故。

それは、福岡の島に暮らす人たちにとっても他人ごとではありません。

福岡市西区の能古島。

島民約670人の健康を支えているのが、島でたった一つの「診療所」です。
◆能古島診療所 福島武雄 医師
「主にやっているのは内科的な処置です。緊急に診断するようなものはここにはございませんので、本土の方に行って検査を受けていただくということになります」

診療所にはCTやMRIなどの医療機器はなく、高度な医療や外科手術を患者が受けるためには島外への移動が必要です。

そのため、脳梗塞や心臓の疾患など命に関わる病気の場合、「ヘリ」は重要な搬送手段となっています。

◆能古島診療所 福島武雄 医師
「飛ぶ時間とか船から降りて救急車で行く時間を考えれば、何十分という差は出てくる。超緊急を要するような場合は一刻も争うということから、ヘリが利用される方がいいと思います」
実際に家族がヘリで搬送された島民は…

◆島民の男性
「おふくろも意識を失って、それですぐ救急車を要請したんですけども、向こうの方から『ヘリコプターを出しましょう』と言ってくれて。何秒でも早く病院に着けば命も助かる点が今まで何度もあった」

ヘリによる搬送で男性の母親は一命を取り留めたといいます。
離島の救急搬送で稼働するヘリコプターは主に3種類です。

消防が運用する「消防防災ヘリ」のほか、国や自治体が負担して運航する「ドクターヘリ」。

そして今回、墜落事故が起きた「民間の医療搬送用ヘリ」(今回の事故機の名称「ホワイトバード」)です。

医療搬送用ヘリの強みは、民間だからこその高い機動力。

病院同士でやりとりできるため、行政が運航するヘリより迅速に離陸できます。
事故が起きた医療搬送ヘリを所有していた福岡和白病院。

その導入を進めたのが、2005年から8年間、和白病院に勤務していた冨岡譲二医師です。

現在は鹿児島市にある米盛病院で副院長を務めています。

◆米盛病院 副院長兼救急救命センター長 冨岡譲二 医師
「まずは亡くなられた患者さん、ご家族、医療関係者が本当に残念で悲しい。長崎・対馬で心臓発作を起こした人と福岡で心臓発作を起こした人を比べると、福岡よりも対馬の方が死亡率が数倍高かった。離島・へき地で困っている人、しかもドクターヘリの恩恵を受けてない方のために我々のヘリを飛ばそうじゃないかということで『ホワイトバード』を導入したのが経緯」

当時すでに福岡や長崎ではドクターヘリの運用が始まっていましたが、それぞれ県内の運用に限られていました。

そうした中、対馬や壱岐は長崎市より福岡市の方が近いため、より柔軟に対応できるよう福岡和白病院にヘリを導入したといいます。
当初は、事故を起こした「エス・ジー・シー佐賀航空」ではなく、別の会社に運航を委託していました。

◆米盛病院 副院長兼救急救命センター長 冨岡譲二 医師
「医療用ヘリを運航している会社というのは全国にいくつかあって、予算・人・機体の問題など、その中で決めている」

鹿児島でも医療用ヘリ事業を立ち上げた冨岡医師。

離島でも高度な医療が受けられるようになるのが理想としながらも、現実的には難しく、医療用へリが不可欠と話します。

◆米盛病院 副院長兼救急救命センター長 冨岡譲二 医師
「島に全部救命センターをつくるかというと、そうはいかない。遠隔医療とかAIを使った診断とか完全なものになるには、まだまだ日時がかかる。今回の事故は不幸なことだが、これで(医療用ヘリ)事業が縮小していかず、いろんな問題が浮き彫りになったのを正していって、地域の人々に安心安全を届けていきたいし、乗っている職員も安心していられるような体制を作っていくべき」

離島や僻地に住む人の命をつなぐ医療用ヘリ。

存続が求められる中、原因の解明が急がれます。

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